なぜ,地域包括ケアシステムを学会にするのか...


投稿者:白山靖彦
戦後のベビーブームによって生まれた団塊の世代が75歳を迎える2025年問題,すぐそこです.最新の国勢調査でも,すでに人口は減少し,かつての高度成長,バブル期に誇った国の隆盛は遠い過去になりました...そして,経済が混沌とする中,医療や介護といった持続的な社会保障制度が危ぶまれています.このような中,なるべくお金をかけず,自分の生き方や人生最後の場所を選択することが可能な「地域包括ケア」が注目されるようになりました.

この用語には,二つの独立したコンセプト:Community based care(地域を基盤としたケア)とIntegrated care(統合型のケア)があり,それを統合して地域包括ケアと呼んでいます.そもそも在宅医療の分野から派生したとされており,日本人ではなくても,最後は住み慣れた自宅で亡くなりたい,介護が必要となってもなんとか自宅で過ごし続けたい,と願うのは自然なことでしょう.
 
 しかし,この考え方は,三重県で以前から地域医療に取り組んで来られた奥野正孝先生のお言葉を借りるならば「古くて新しい」ものであり,決して今に始まったことではないのでしょう.多職種連携・協働などのキーワードがあらゆる領域で一般化し,医師,歯科医師,看護師・保健師,PTやOT,そして介護福祉士や社会福祉士,しいては行政職員をもチームの一員として,支援していくシステムはすでに存在しています.特に,社会的・人的資源の少ない地域では,そのシステムによってしか在宅医療や介護が成立しないわけですから.

 こういった背景から,今回徳島大学・大学病院では「地域包括ケアシステム」に焦点をあて,「学会」という形で応援しようと発想しました,いわゆる『地域に寄り添う大学・大学病院の実現』です.実現というよりは,ほんとうは実践なのかもしれませんが.今後は,地域の色々な課題を取り上げ,今までの実践を通して培われてきた方法を活用し,問題解決を図っていく.また,個の専門職を孤立させず,相互に支えあっていく場をつくっていく,それがこの学会の意義だと考えています.皆様とともに「地域をこえた顔のみえる関係づくり」を目指していきたいと考えています.先人たちが必死で取り組んできた古くて新しいシステムを.

代表幹事 白山靖彦
本学会にご賛同頂きました団体会員の皆様

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