認知症者の自動車運転について


投稿者:白山靖彦
認知症だから即,運転禁止はいかがなものか,という議論が湧いています.道路交通法改正により,「認知症のおそれあり」とされた75歳以上は全員,診断の対象となり,認知症の診断がつくと,免許が取り消しか停止になるというものです.

最近の交通事故は,高齢者による高速道路逆走やアクセルブレーキの踏み間違えなど,重大な事故に繋がる恐れがあり危険であるためです.一方,生活者の視点から言うと,認知症でも運転可能な人はいるし,過疎地域で車が運転できないと,畑や病院にも行けなくなり,たちまち生活の継続が途絶する,という意見も数多くあります.どちらも正論で,論理性に矛盾はありません.ただ,最近「合理的配慮」という用語が使われるようになり,その意味は,たとえば免許を取り上げるなら,その代わりに他の移動手段を過不足なく整備する,という考え方に立つ,というものです.つまり,何事にも合理的にお互いの利益・損益を相殺し,単なる禁止ではなくきちんとした配慮が必要だ,ということが重要なんですね.

自動運転技術や民間の移送手段の規制緩和など,いっそう進めたうえで,認知症の自動車運転について議論することが必要ではないでしょうか.自動車保険の見直しもしかりです..合理的配慮という言葉は,障がい者差別禁止条約でも明確に謳われており,その観点は何にでも通用するものと考えられていて,今後地域包括ケアシステムの中でも,議論の端々に出てくるでしょう.
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