離島・過疎地域医療 ~最前線~


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今日は,地域医療を実践する我が学会理事の稲次先生を訪ねて,牟岐町出羽島(てばじま)と美波町の阿部(あぶ)診療所へ.

出羽島は,牟岐港から船で15分,あいにくの雨でしたが,波もあまり高くなく,数人の島民と,郵便を配達する人が.島民は70人程度で,車のない島でした.手押し車がどこの家の軒先にあって,それで荷物を運ぶようです.子どもは移住してきたご家族の1人だけで,島の学校はすべて廃校になったそうです.今では,校庭がヘリポートに.行ったときは,患者はいませんでしたが,「海が荒れると,不安になる.病院にもいけなくから」と,島の人がよく口にしていると.昭和な街並みが残り,懐かしい香りが素敵な島ですが,帰り際,ここは午後からは無医島になるんだな~,と思うとちょっと不安が...牟岐町の海部病院とは,電子カルテでつながっていますが,いざという時の前には島を早々に離れ,病院や施設に行かれる方がほとんどだそうです.つまり,住み慣れた島で最後を遂げられない,ということですね.稲次先生も徳島県医療政策への恩返しで,離島・過疎地医療を週に1度来ているそうですが,そのことは大変憂いておられました.

そして,午後から美波町の阿部診療所へ.患者さんが待合室に溢れていて(ほとんど高齢の方々),楽しそうに診察の順番を待っていました.昔,病院の待合室がサロン化していると批判を浴びた時期もありましたが,今ではまさに地域包括ケアシステム拠点なんだろうと.孫の写真を見せてくれたり,「きれいな人と写真がとれていいのう,(笑)」とか冗談を言われたり.でも,「家に帰ったら,ひとり,息子たちは都会に行ってしまった」と少し寂し気な表情を浮かべたのが印象的でした.

ということで,稲次正敬先生,すごく頑張ってました.凄腕の整形外科医が地域医療に情熱を傾ける,かっこよかったです.本物の人の前では,自分の未熟さをしり,また,明日から頑張ろうと.今日は,本当にありがとうございました.同行した大学院生が,「いたるところに人の生活があり,そこにちゃんと生きてる実感があってこそ『地域』が成り立つんでしょうね」と,ふと感想を洩らした視察でした.
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